エリカの密やかな朗読

エリカの密やかな朗読

自治会長の夜間パトロール。隣の若夫婦の甘い声に、なぜか伊藤さんの声が混ざる──ベランダで耳を澄ませてしまった

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自治会長になってから、夜が忙しくなった。防犯ジャンパーで歩く夜間パトロール。静かな住宅街で、隣に越してきた若い夫婦の部屋から漏れてくる“いかにも”な声。笑い混じりの息づかい、短い囁き、途切れるたびに増す熱――その中に、なぜか仲間の伊藤さんの声が混ざっている気がしてしまう。覗くつもりはなかった。ただ、確かめたかっただけ。正しさの仮面が、夜の気配にほどけていく。これは「守るはずの人間」が、境界を踏み外しかける物語。